監督&プロダクションノート

ゲレオン・ヴェツェル 1972年ドイツのボン生まれ。ハイデルベルク大学で考古学の修士号を取得し、スペインにある海洋考古学の研究所で考古学者として働く。その後、ミュンヘンのUniversity of Film and Television (HFF Munchen)でドキュメンタリー映画制作を学ぶ。2011年に日本でも大ヒットした、人気レストランに密着したドキュメンタリー『エル・ブリの秘密 世界一予約のとれないレストラン』を発表。今もミュンヘンに在住し、フリーのライター、映画制作者として活躍している。

ヨルグ・アドルフ 1967年ドイツのヘルフォルト生まれ。マールブルク大学で、近代ドイツ文学、メディア学、ヨーロッパ民族学、美術史を学ぶ。1994年に修士号を取得した後、ミュンヘンのUniversity of Film and Television (HFF Munchen)でドキュメンタリー映画とテレビジャーナリズムを学ぶ。以来、同校でドキュメンタリー制作を指導している。ミュンヘンに在住し、フリーの映画制作者として活躍する。

制作ノート 私たちはドイツのゲッティンゲンにあるシュタイデル社の一室で待っていた。ゲルハルト・シュタイデルについては、「長い時間待たされることはない」とか、「変わった人物ではない」などと書かれている記事は存在しない。彼は製本だけでなく、不思議なものごとの進め方でも有名なのである。
私たちは書庫で資料に目を通しながら、待つことになった。そして数時間後、ミュンヘン行きの終電が出る直前になって、ついに内線電話が鳴った。「今なら2、3分の時間がある」 私たちは階段を駆け降り、シュタイデルがいる紙の洞穴へと向かった。ずいぶん遅い昼食を食べていた彼は、映画について自分の考えを話した。「特に重要なのは、この印刷所での仕事だ。ここではすべてを見ることができる。数週間、私に同行してもいい。向かう先は、ロンドン、パリ、ニューヨークに…それも重要だ。そうすれば、私がどんなふうに仕事をしているのかがわかる。1日10件の約束が次から次へとだ。必要なものが揃うまではここに滞在して、撮影したいものを探してもらってもかまわない。それは自分たちで考えてくれ。私には君たちの狙いがわからないからね」
私たちは彼の言葉通りにさせてもらった――映画制作がいつもこれほど簡単なものであればいいのだが!私たちは1年間かけてシュタイデルの仕事に密着し、一流の美しい写真集が制作されていく様子を観察することができた。ときには、シュタイデルの膨れ上がったスーツケースを空港から空港、空港から写真家のスタジオへせっせと運び、音もなく撮影を進めながら会話に聞き耳を立てた。私たちは映画制作者として、芸術的な技能やテーマ、そしてコンセプトについて写真家から多くを学んだ。写真の世界では実体を捉える芸術という熱い議論が存在し、表層下まで見通す目を持つ思慮深い観客がいることを知った。それだけではなく、本にはよい匂いがしなければならないこと、そしてシュタイデルくらい徹頭徹尾、愛情を持って取り組めば、アートブックのような狭い分野でも大きな仕事が成し遂げられることを私たちは学んだ。